Port Park

車中心社会における、市民体育館改修をきっかけにした新しい地域コミュニティ形成の提案

作者:坂本 竜一

作品について
車中心社会の地方都市における市街地の衰退についての研究。地域社会や地域資源、人と人の交流を促すための、空間を提案する。
わたしの地元である群馬県太田市における新しい公共空間の提案である。市の人口減少問題、と太田市運動公園内に建つ市民体育館の老朽化、という二つの問題に対し体育館の改修を想定して考えた。
公園には、近隣の学生や住民が練習や運動のために訪れる。また、競技大会が開催される際にはキッチンカーが展開するなど、市内外問わず多くの人が利用する。周辺環境にあわせて「学習室」「市場」というように既存体育館の構造や空間の一部を活用しながら、新しい使われ方を組み込むことで、ここを訪れる人々の多様な目的を受け入れられる半屋外空間を作り出す。
車で目的地までの最短距離の移動は利便性に優れる一方で、少しずつ更新されていく地域の魅力には気づきにくい。この空間を通して、意図していなかった出会いや発見が誘発されることで、新しいコミュニティが生まれると考える。空間同士が視覚的・物理的に連続しているような「仕掛け」を空間に施している。
このデザインにより、公園に訪れた人々を、ひいては太田市における地域コミュニティをつなぎ、持続的に交流の輪を形成するきっかけになることを期待している。
コメント

INTERVIEW

Q1.作品のアピールポイントを教えてください。
A.意図していなかった出会いや発見が誘発されることです。提案では体育館の改修を想定しています。この新しい公共空間は、市場・学習室・閲覧室・学習室・運動という周辺環境にあわせた新しい使われ方の導入と、空間の連続性という仕掛けにより、地域交流や市の魅力と出会えるような空間です。現状の車社会において、人や地域とのコミュニティを形成するきっかけにしたいと考えています。
Q2.制作の動機は何でしょうか?
A.市民体育館の老朽化を知ったことです。この建物は小さい頃からよく利用していたこともあり、今後どのようになるのか疑問を持ちました。調査のなかで太田市の中心商店街が衰退していることがわかり、体育館の改修を想定して提案するというおおまかな方向性を決めました。また新しい体育館が向かいに建設予定なので、地域の魅力を再発見できるような場所に刷新できないかと考えていきました。
Q3.制作する上で大切にしていることはありますか?また、それを制作にどう活かしましたか?
A.疑問に思ったことや気になったことはその都度、書き留めておくようにしています。必要のないと思うことでも、メモやイラストなど、考えに行き詰まった時の支えになる場合があると感じています。今回の卒業制作では改修の面で、新旧のバランス、という難しさがありました。記録を元に、可能な限りのパターンを考え、空間の新しい使われ方や見た目の自然さを検討することで制作に活かしました。
Q4.コロナ禍の制作は、苦労も多かったと思いますが、工夫して乗り越えた点などあれば教えてください。
A.オンラインで担当教員や友達とこまめに連絡を取るようにしたことです。自宅で集中して作業することも良いですが、制作がはかどらない時期もありました。悩んでいる時や思考を整理したいときには、ある程度考えたら形にして意見を頂く、のように自分なりの決まりごとをつくることで進めていました。状況を踏まえて、大学での作業や、実際に提案する場所へ訪れたこともよかったと思います。
Q5.後輩たちに向けて、卒業制作を行う上でのアドバイスがあれば教えてください。
A.早いうちから自分の考えを模型でアウトプットすると良いと思います。3年生の時期はほぼオンラインで、自宅では主にCGやスケッチで考えを形にすることで提案をしていました。もちろんそれでも構わないのですが、最終的に模型は提案するときの一つであるため、前期から模型を用いた考えの具体化を進めると、アイデアも整理され、後期によりスムーズに制作に取りかかることができると思います。

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