図書街
本と人が暮らす
市民が知的欲求を満たし、学習する上で重要な図書館だが、特有の静けさや感染配慮による利用制限等により本の貸し出し数の減少が見受けられる。一方、巣篭もりの影響で読書への関心が高まり、読書自体の需要は減少していない。
そこで本研究では、社会状況に適した読書空間を維持し、人々と図書館の新たな関係を築く「図書街」を提案する。本を雨や日光から守る屋根のある環境、アーケード商店街に複数の読書空間を展開し、商店街全体を図書館化する。商店街での買い物や通行人等、街の多くの人が行き交う身近な距離に本が存在することで、人々の生活ルーティーンに、”ついで読み”や”ついで借り”といった読書体験が加わる。
全ての本には指定の返却場所が無く、図書街内であれば、借りた本棚とは異なる都合の良い本棚へ返却することができる。この仕組みによりジャンルを問わず本がシャッフルされ、利用する毎に本との一期一会の出会いが生まれる。
本との出会い方・過ごし方が変化し、新しいライフスタイルをつくる「人と本が暮らす図書街」。これにより、かつては短時間で終了していた目的が、本と過ごす時間により商店街内での滞在時間が増え、商店街の活性化にも繋がる。そして、書物の保管のみに限らず街の住民が本と関わるために足を運ぶ「図書街」の空間デザイン提案である。