Chigasaki Life Cycle

線路で分断された南北の境界線を繋ぐサイクリングロード

作者:奈良 将馬

作品について
神奈川県茅ヶ崎市の自転車利用を増やす取り組みとして、線路によって分断された南北の境界線を繋ぐサイクリングロードの提案である。JR茅ヶ崎駅周辺では狭い路地道、平らな道が多く、自転車の利用率が高い。また、茅ヶ崎市には国道1号線と海沿いの国道134号線があり、運動を目的とするロードバイク乗りや、海まで移動するサーファーたちが自転車を利用する姿が多く見られる。その一方で、自転車で南北を行き来する為には駅から300m離れた地下道まで移動しなくてはならない。この不便さから、人々の行動範囲が制限されることで、賑わいが駅周辺に集中してしまう一因にもなっている。そこで本研究では、南北の中心を繋ぐことで南北の自転車移動が円滑化すると共に、自転車を介したコミュニティ空間を設けることで地元民の交流から、茅ヶ崎の知らない店舗や魅力を広める。具体的なデザインとして、サイクリングロードの傾斜は緩やかな勾配によって、幅広い世代の人々が上りやすく、街と連続した空間として自然と利用したくなるよう配慮している。また自転車は、他にも子供の送り迎えや買い物などでも利用されている為、足の疲れを癒したり、交流の生まれる空間をブリッジ上に配置した。線路で分断された南北を繋ぎ、駅前だけではなく、茅ヶ崎市全体が活性化する自転車の新たなライフスタイル提案になっている。
コメント

INTERVIEW

Q1.作品のアピールポイントを教えてください。
A.神奈川県茅ヶ崎市の自転車の利用率をあげる為、幅広い年代の方々が利用できる工夫を取り入れました。傾斜は高齢者の方でも自転車で上りやすいように緩やかにし、道幅も広くすることで安心感と開放感を与える工夫をしました。また、駅周辺では自転車だけではなく、歩行者や車も利用します。サイクリングロードと駅前の利用者に合わせた空間提案になっている為、サイクリングロードと駅前環境の関係性を重視してデザインしました。
Q2.制作の動機は何でしょうか?
A.私は最初「空間の仕切り方」について研究していました。その研究から人間の行動や空間にある差に興味を持ち、研究から得たことを地元である茅ヶ崎市に取り入れたいと思いました。茅ヶ崎市では自転車の利用率が高い一方、南北を行き来することが不便でした。私自身も22年住んでいますが南は南で、北は北で物事を済ませていることが多い為、この制作で地元の人の流れを作り、街が1つになるような提案をしたいと決心しました。
Q3.制作する上で大切にしていることはありますか?また、それを制作にどう活かしましたか?
A.私が制作で一番大切にしていたことは調査です。街で自転車を利用する人や地元の道、人が集まる場所など私自身の足と目で見ることを大切にしていました。今ではインターネットなど情報を得る方法が多くありますが、情報自体が古かったり、その場所を利用する全ての人々の行動を見ることは出来ません。実際に調査していく中で、きつい傾斜の坂道では、手前で自転車から降り、押して登る高齢者の姿や、出勤前に子供の送り迎えをしている父親の姿など、年齢層や時間帯によって自分が知り得なかった人々の営みを発見しました。このフィールドワークの積み重ねによって、その場所を利用する人々の目線でデザインすることができました。
Q4.コロナ禍の制作は、苦労も多かったと思いますが、工夫して乗り越えた点などあれば教えてください。
A.コロナ禍で苦労したことは作業する場所と材料、機材が家になかったことです。家には筆記用具と勉強机で大きいものを作るスペースがありませんでした。家でも作業できるように材料やカッターマット、必要な道具を買って揃え、大学でしかできない作業と家でできる作業を区別し、取り組んできました。お金はかかりましたが作業しやすい環境とスケジュール管理ができたことでコロナ禍の制作を乗り越えられました。
Q5.後輩たちに向けて、卒業制作を行う上でのアドバイスがあれば教えてください。
A.卒業制作は大学生活最後の課題なので全力で頑張って欲しいと思います。作業する中でアイデアや方向性などで何度も悩むことがあります。悩んだ時は周りに相談したり、息抜きで散歩など違うことをすることも大切です。周りに相談することで思いつかなかった発想で、自分自身のデザインの幅が広がるし、生活の身の回りのモノや人の行動など、少しの発見がアイデアに繋がるからです。それらの発見をメモし、カタチにできるよう頑張ってください。

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